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六代目蔵元 佐藤淳平 私の履歴書

全量純米大吟醸蔵へ(楯野川新聞 2015年7月15日号より)

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いつも楯野川新聞をご覧いただきありがとうございます。

「日本酒楯野川はH22BYより全量純米になる」というコンセプトは掲げたものの、世の中には既にオール純米を達成している蔵元さんが多く存在しました。そして、当時は『コメ余り』が深刻化しており、オール純米にすることが物理的に容易になっていた事や、「お客様は純粋なものを求める傾向にあるのではないか」との推測から、今後は『オール純米蔵』どうしの間の差別化も重要になり、単に純米化しただけでは売れない時代が来るのではないかと考えました。  そこで、さらに踏み込んで楯の川酒造の個性を打ち出すために、「純米吟醸」と「純米大吟醸」だけを造っていこうという方針を打ち出したのです。もともと、当時の商品ラインナップも純米酒は精米歩合55%のものが殆どで、純米吟醸として販売しても何ら問題はなかったので、純米・吟醸の蔵として知名度を上げていこうと思いました。

当時の社内では、この方針への異論は全く出ませんでした。皆がそれなりに良いコンセプトだと認識していたのではないかと思います。

しかし、酒造計画を立案していく中で、そこまで個性的なコンセプトではないし、果たしてこれで100年、200年とやっていけるだろうかという疑問を持つようになりました。

さて、どうしようか。9月に入ると酒米の収穫も始まり、酒造りの時期に突入していくと、仕込みに忙殺されて、コンセプトなどを悠長に考えている暇が無くなるのは目に見えておりました。

100年後でも200年後でも通じるコンセプト。外国のお客様にも伝えやすいもの。そして日本酒の複雑なカテゴリ分けを克服するもの。更に、良いものを飲みたいというごく自然な人間の要求を満たすもの。

様々なことを視野に入れ、ようやくたどり着いたコンセプト。それが「全量純米大吟醸」というものでした。

純米大吟醸のみを醸し、精米歩合や酒米の品種違い、生と火入れ、原酒やおりがらみなど季節感や蔵の臨場感を感じられるようなお酒を造っていこう。そして、一般のお客様が気軽に飲めるような価格帯、1800mlで2000円~3000円位の商品を主力にしたうえで、尚且つ高価格帯の商品もラインナップに揃えていこう。

コンセプト、方針も固まり、決意を新たに、H22BYより全量純米大吟醸の蔵としてのスタートを切ることになりました。

※かくして、楯の川酒造は全量純米大吟醸蔵になりました。次号、「私の履歴書」最終回です。

六代目蔵元 佐藤淳平