Shield シールド
昨今、酵母の開発と並んで、都道府県単位で酒米の開発にしのぎを削る時代となっているが、楯の川酒造が位置する山形県庄内地方は、米の品種改良がとても盛んだったことを伺える資料を見た。鶴岡市藤島地区にある農業試験場の方からいただいたその資料を見ると、今では考えられないのだが、品種改良や新品種の開発を、農家の個々人が主体となって行っていたのであった。これに尊敬の念を抱かずにはいられない。米を原料とし年間数百トン使用する商売=酒造業を営んでおきながら、私はその事実を知らなかった。米どころ庄内の酒蔵として、その歴史や先人の方々の偉業を後世に伝えていかなければならないと、強く決心したのである。
新しい酒米の品種開発も大事だが、それらの源流となる昔の酒米の品種も大事にして残すべきだ。そんな考えから私は、地元の米の品種の復活を、2017年の秋口から模索し始めた。庄内町発祥の 「亀の尾(かめのお)」 については、歴史のある酒米だが、同町の鯉川酒造さんを筆頭に多くの蔵元さんで取り組まれており、それとは違う品種もないだろうかと探した結果、たどり着いたのが、「亀の尾」の親にあたる 「惣兵衛早生(そうべえわせ)」 だった。
前述の農業試験場に残っていた「惣兵衛早生」の種もみを1.9kg譲り受け、地元の契約農家の庄司隆さんに栽培を打診した。最初は後ろ向きであったが何とか説得し、2018年春、最初の田植えに漕ぎ着けた。0.5反というわずかな面積からのスタートだ。初年度の栽培は、品種特性を見る意味合いもあるが、翌年の本栽培に向けて種子を確保することが目的だった。古い品種だけあって、丈が長く栽培は困難を極めた。これでは、亀の尾と一緒でほぼ収穫前に潰れてしまうだろうから、栽培したがる農家はいなくて当然だろうと思った。消えて無くなって当たり前の品種ということだ。最近の品種は、全て丈が短くなるよう品種改良されており、コンバインで楽に刈れるからだ。そうでなければ、面倒な酒米の栽培などやろうとは思ってくれない。そして、2019年春、作付けする契約農家さんが一人増え、1.2ヘクタール(≒12反)の惣兵衛早生を植えた。2019BYの造りで、その米を醸す。
2019BYの計画には、親の「惣兵衛早生」だけでなく、子の「亀の尾」のお酒の醸造も組み込んだ。この2種類の米で醸した酒を、日本酒 楯野川の新シリーズ 「Shield(シールド)」 として発売。第1弾「Shield 亀の尾」は2020年3月に、第2弾「Shield 惣兵衛早生」は同年10月頃に。その後「SHIELD」シリーズとしてリリースし続けています。 今日我々が手にする米、その系譜を築いてこられた先人方に想いを馳せ、歴史の轍を辿るような気持ちで、ぜひとも味わっていただきたい。
六代目蔵元 佐藤淳平
SHIELD 惣兵衛早生(シールド そうべえわせ) 数量限定
2024年9月発売
「惣兵衛早生(そうべえわせ)」は、楯の川酒造が、3年以上の歳月をかけて、種もみから復活させた、希少な山形県庄内地方の在来品種です。
庄内地方は昔から、民間の篤農家による稲の品種改良が盛んな土地でしたが、その歴史と産物を日本酒という形で守り、伝承していきたい、と考えたのが、SHIELDシリーズです。
ラベルには、その思いを込め、戦国時代に考案された竹の盾「竹束」と、日本古来の魔除けとしても用いられる「籠目紋」を組み合わせたシンボルマークをデザインしました。
「楯野川 SHIELD 惣兵衛早生」は、優しく落ち着いた香りとしなやかな酸味が奥深く重なり、素朴ながら奥ゆかしい味わいに仕上がっています。積み重ねられた歴史を感じながら、ゆっくりとお楽しみ下さい。
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